Last update: 16/01/12


 合成生物学による人工遺伝子回路網の構築

近年、人工遺伝子回路(Genetic circuit)または合成生物学(Synthetic biology)と呼ばれる研究がシステム生物学分野を中心に行われ始めています。この研究では、遺伝子相互の制御関係を利用し、それらの遺伝子を人工的に組み合わせることで、複雑な遺伝子発現を実現することを目指しています。複雑な遺伝子発現を実現するためには、複数の生化学分子の動的な挙動を取り扱う必要があり、単なる分子生物学実験のみならずシミュレーションやシステム解析による遺伝子(回路)の設計が不可欠となります。我々は、システムの設計、システム解析、分子生物学をすべて利用することで、遺伝子発現が周期的に振動するシステムの実現を目指しております。

 代謝工学によるバイオアルコール生産の向上

近年の原油価格の上昇、CO2排出量削減の観点などからバイオアルコール生産に注目が集まっています。我々は、分子育種で大腸菌に本来生産できない種類のアルコールを生産させることに成功しました。大腸菌は、増殖速度が速く、遺伝子組み換えもしやすいため、アルコール生産およびその向上に適していると考えられます。さらに生産量を向上させるために、代謝のコンピュータシミュレーションを行い、その結果に基づいた分子育種(代謝工学)を行っております。また、生産されたアルコールは大腸菌には毒ですので、アルコール耐性を向上した大腸菌を育種するために、マイクロアレイ、プロテオームなどの情報をバイオインフォマティクス技術で解析し、分子育種に利用しております。

 ドライ−ウエット系をつなぐバイオインフォマティックス

最近、ヒトゲノムの読みとり作業がほぼ終了しました。これは、高速に遺伝子を読みとる装置や大量の実験を一度にこなすロボットシステムのおかげです。このように、様々な生化学実験装置は、高速化・自動化されつつあります。このため、数万、数十万のデータが得られますが、これらから何か傾向を読みとったり、整理して考えることは大変です。このようなデータの整理や理解には、コンピュータによる人工知能の利用が有用です。私は、ファジィ推論、人工ニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズム、隠れマルコフモデルなどの知識情報処理の手法を用いて、生化学実験データを調べることによって、生命の謎を明らかにしたいと考えております。特に、コンピュータ(ドライ系:水を使わないで生物を調べるので、実験系と対比してこのような言い方をします。)と実際の生化学実験(ウェット系)による解析を一緒に行うことによって、ドライ−ウエットをつなぐ研究を行いたいと考えております。また、医療や医薬品開発(創薬インフォマティックス)に対する応用にも、積極的に挑戦していきたいと思っております。

DNAマイクロアレイなどの遺伝子発現データ、
タンパク質発現データを用いたクラスタリングに関する研究
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 Fuzzy ART、Fuzzy k平均クラスタリング、階層型クラスタリング
                    など様々なクラスタリング手法の比較・検討
 合理的なクラスタ数決定法

DNAマイクロアレイなどの遺伝子発現データ、
タンパク質発現データを用いた生物学・医療データの分類および識別 さらに詳しい説明へ

  サポートベクターマシン、人工ニューラルネットワーク、
            ファイジィニューラルネットワークなどによる非線形モデル化
 統計的な手法、分類や識別に重要な遺伝子、タンパク質の絞り込み(特徴抽出)
 他種類のデータベースのデータを横断的に解釈する方法(メタクラスタリング)

遺伝子・タンパク質相互作用ネットワークの推定 さらに詳しい説明へ
 新しいブーリアンモデル、ベイジアンモデル、S-systemとGAに基づく非線形モデル同定

ガン細胞や細胞分化シミュレーションモデルのシステム解析 さらに詳しい説明へ
 細胞周期のシミュレーションおよびシステム解析