私たちの研究室では閉鎖生態系環境工学を主なキーワードとして、つぎの2つの課題に研究に取り組んでいます。

1) 代謝反応システム

 生体内で起こっている代謝反応は、多くの様々な酵素触媒によって迅速に進められ、全体としてネットワークを形成しています。もし、これらの反応の経過(代謝物濃度の時間変化)をコンピューターを使って予測できるようになれば、代謝反応の本質が明らかとなります。しかし、このためには各酵素反応を正確に表すことができるミカエリス-メンテン型の反応速度式が必要であり、その決定には長い年月がかかります。したがって、このような解析は現実的でなく、解析ができないと断念せざるを得ません。
 
最近の分析技術の目覚ましい進歩により、細胞内で変化する代謝物濃度の時間変化が測定できるようになりつつあります。そこで、私たちはこれらの時間変化のデータから大規模代謝反応システムに対するS-システム型あるいはGMA-システム型微分方程式モデルを構築し、これらをコンピューターで解くことにより、複雑な代謝反応ネットワークの特性を明らかにしようとしています。
 この目的達成のため、反応速度式中の速度パラメーター決定のための普遍的方法の確立をおこなっています。また、動的感度(時間とともに変化する感度)を簡単かつ常に信頼できる精度で計算できるソフトウエアSoftCADSの開発を行いました。本ソフトでは常に超精度で動的感度を計算することができます。現在、本ソフトを用い、代謝反応システムにおいて動的感度の計算値を有効に利用する方法の開発を行っています。

キーワード:大規模ネットワーク、 感度解析、定常状態感度、動的感度、バイオケミカルシステム理論、
      超高精度数値計算、テーラー級数法


 
2) 環境浄化システム

 本研究では、汚染された環境を効率よく修復するために光触媒を利用した環境浄化装置を開発したり、数式モデルを構築し、そのパフォーマンスを理論的に明らかにしたりしています。 たとえば、住宅の建築材などから放出されるホルムアルデヒドのような揮発性有機化合物、インフルエンザウイルスを含む空気を迅速かつ確実に浄化する空気清浄機の実用化や、太陽光や風力などの自然エネルギーのみで水を浄化する方法の開発に取り組んでいます。
 光触媒はその触媒活性が十分に大きくないため、反応プロセスへの応用が困難です。光触媒の反応性能が高くない原因には、酸化チタンの光触媒活性自体が高くないことのほか、これを利用するときの環境があります。当研究室での集中的研究の結果、これには触媒近傍に生じる境膜拡散抵抗や単位表面積当たりの紫外線強度が大きく関係していることが明らかとなりました。当研究室では、これらの活性低減因子を排除した装置作りを行っています。
 9本の紫外線ランプを並列に配置した並列管型光触媒反応器は、この問題を解決した一例です。大量の空気中に含まれる揮発性有機化合物(VOC)を短時間に分解し、ほぼゼロの濃度まで減少させることができます。一方、市販の空気清浄機を購入してその性能を調べましたが、VOCを分解してその濃度をほぼゼロまで低下させるものはありませんでした。本研究室で開発した並列管型光触媒反応器はVOC分解により空気を浄化させる唯一の空気清浄機であると考えています。


キーワード:空気浄化装置、揮発性有機化合物、光触媒、化学物質過敏症、環境指針値、極低濃度、
      境膜拡散抵抗



 本研究室での研究の特徴は実験的手法と理論的手法を駆使し、難解な問題の解決を図る点にあります。たとえば、化学反応、代謝反応、物質移動などからなるプロセスに対して数式モデルを作り、コンピュータシミュレーションを行ってその特性を明らかにし、プロセスの特性を明らかにしたり、より性能の高いプロセスを開発したりします。



                    
閉鎖生態系と閉鎖生態系工学

 閉鎖生態系とは、エネルギーの出入りは自由であるが、物質の出入りについては完全に閉ざされており、その中で生命が維持されているシステムを指します。代表的な例は地球です。この大きな閉鎖生態系では、宇宙空間と地球の間で太陽エネルギーや地球が発生するエネルギーの出入りがあり、地球の物質はその引力により簡単に宇宙空間へ出て行くことができません(もちろん、たまには隕石などが地球へ入ってきますが、これらはわずかな量です)。この閉ざされた環境の中、人間を始めとする多くの種類の生物が生命を維持できるようになっています。我々人類はいつのまにか地球が有限の大きさであることを忘れ、大量の物質を自然界へ放出してきました。その結果、人類は近年多くの環境問題を抱えるようになっています。このような閉鎖生態系における問題を解決するには、様々な技術の導入が必要です。閉鎖生態系工学とは、この問題解決を図るための学問です。


               


 出張先で撮った外国の風景



2001年6月にドイツ・ニュルンベルグで撮影
(ヨーロッパ化学工学会)



2002年6月にノルウエー・クリスチャンスンで撮影
(第7回S-システムシンポジウムにて)


2002年6月にノルウエー・オスロで撮影
(第7回S-システムシンポジウムにて)